零  
  
  ――――【上条当麻】の定義。
 それは、なんてことはない数式のように、それこそ1+1=2であることが必然であるように定義が可能な事柄である。
 しかし、それを説明するに【上条当麻】という存在を知悉していない諸兄の為に、【上条当麻】がその未来の成長した姿において、どのような行動を起こし、
 どのような結果を残したのかを説明しよう。実に簡潔で、単純だ。

  ――――【上条当麻】とは世界を救った【英雄】である。
 昨日今日知り合った、世界大戦の引き金になりかねない機密レベルの【修道服のシスター】の境遇を救うために全力を尽くした。
 10分ほどしか出遭っていない、【巫女服の少女】を右腕を斬り落とされながらも全力で助けた。
 難癖しかつけられたことのない、【自分より遥かに格上の年下の少女】を、【白い子供】が成長した【学園都市最強】と死闘を繰り広げ、これを下すことによって、助けた。 
 敬愛してやまない【上条刀夜】を救うことが出来なかった。助けてくれたのは【上条当麻】の親友【土御門元春】だった。合理的な格闘術を我流で探し求めた。
 敵意を向けられて攻撃された上に、救い続けることを誓った【修道服のシスター】を奪われたのにもかかわらず、その男、【闇咲 逢魔】の事情を一聞きして全てを許し、ともに【闇咲 逢魔】のヒロインを助けに行った。
 この頃になると【上条当麻】は世界中に強いコネが出来ていた。このままいけば【世界】を相手にしても渡り合える存在と成ると危惧されるほどに。故に暗殺者に狙われたが、これを撃破した。
 【学園都市の深部】、その真実の恐ろしい一端との邂逅を受け入れ、更に、自らの八当たりを晴らすために世界大戦を目論んだ【シェリー・クロムウェル】と死闘を繰り広げ、これを撃破した。
 あって間もない【修道服の尼さん】を救うためだけに、【一個師団の少女の軍隊】の中へ単身突撃、今までの事件で出会った仲間たちの力を借り、それを成功させた。
 事情を何も聞かずに、【座標移動能力】によって空間自体が歪み始めた不安定な空間へ単身突撃し、これを正常化。はじめましての少女と必ず果たす約束を当たり前のように行った。
 【学園都市】が一番賑わう【大覇星祭】。突き立てるだけで全世界の支配が可能な特殊な十字架の運搬を阻止するため、久しぶりの両親との再会を優先事項から外してまで、【学園都市内部】を駆けまわった。
 旅行で北イタリア。【修道服の尼さん】を救う時に撃破した【一個師団の少女の軍隊】が緊急事態であることに気が付くと、その場に偶然そろっていた仲間の力を借りてこれを救出した。
 9/30.それは世界第三次大戦の序章だった。今までの全ては前座であり、本当の戦いはここから始まった。


 ――――これ以上語る必要はないだろう。
 これ以上なく、【上条当麻】が【英雄】である事に疑いようがないはずだ。
 詳細がもっと知りたい人は、【上条当麻】の歴史が描かれた【とある魔術のインデックス】を読むといいだろう。
 そうすれば分かるだろう。
  ――――【上条当麻】とは世界を救った【英雄】の【一人】である。
 ”世界を救った”ということがどういうことなのかを。
 【上条当麻】がいかなる【英雄】であったのかを、ここでこのような前座の前座を眺めているよりかは、嫌というほど理解できるだろう。
 だけど、それを読んで疑問に思って欲しいことがある。
 なぜだ?
 なぜ、上条当麻は、自ら、そんな行動を取ることができる?
 頭が狂ってる? 体の構造がおかしい? 人間じゃない? それともそれとも君たちはこう言う言葉で片付けてしまうだろうか?



                 【主人公である】



 【上条当麻】は【主人公】であるが故に、物語を動かす1つの役割をするためにそのように動いている。
 とメタファー的なことを言って、思考を放棄してしまわないだろうか?
 いや、もしかしたらこう言うかもしれないね。【歴史書】もこう言ってる。


            【神ならぬ身にて天上の意思に辿り着いたもの】


 そう思った君。君は、恐らく正解している。
 一部の隙もなく説明し終えているからね、この一文はその全てを表しているといってもいい。
 分からないそこの君は、これから始まる、【上条当麻】の物語を全て読み終わる頃には一分の隙もなく理解していることだろう。
 そう、まずは【上条刀夜と上条詩菜の恩師】が入学の四日前に【上条家】を連れ、学園都市のバスへ乗り込んだところから始まる。

 


  1

  ――――ニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤ。
 その男はずっとそんな調子だった。終始、上の空ながら楽しそうにしている。何がそんなに楽しいのだろうか。【上条当麻】には理解できない。
 だけど、そんなわけのわからない男が、これから始まる【学園都市】での、ほぼ卒業まで同居が決まっている相手だった。
 正直、気味が悪かった。
 そして、なによりも気持ち悪かった。
 この男は、【上条当麻】の顔を見た瞬間からこうなって、そしてそれが止まらなくなって、もう最初にどんな顔をしていたのか忘れてしまうほどに、その男の印象は変わってしまった。
 名前は――――なんといったか、そういえば、教えてもらっていなかった。
 いや、聞きたくない。例えこれから一緒に暮らしていくことが長い付き合いになるであろう人間であっても、こんな妙な人間の名前は聞きたくもなかった。
 どうせ、そのニヤニヤとした顔の下に見え隠れする表情は、いままで【上条当麻】を排斥してきた連中と同じ思考で満たされているのだ。
 【上条当麻】はそのことに深く安堵すると、無視することに決めた。
 一緒に暮らすのはいい。父さんと母さんが信頼して【上条当麻】を預けるような人間だ、ならせいぜい護ってもらおうじゃないか。だからと言ってお礼を言うつもりも起きないが。
 そう結論付けると、そのニヤニヤとした顔から、視線を離して窓の外を見る。

   ――――あれが。
 
 ゴクリ、と息をのむ。
 あれが、父さんと母さんが言っていた、【上条当麻】の【不幸】を治すことができるかもしれないという【学園都市】―――――













         一

       ・・・さて、【歴史】を知悉している方々には、もうこの時点で例えようのないズレ、を認識していないだろうか。
       こいつは、本当に、あの【上条当麻なの】か?その一点。
       そんな感じを受けただろうか。
       だが、ちょっと待って欲しい。
       こんな調子の【上条当麻】に少しでも疑問を持った人がいるなら
       【歴史ログ】:真01話---【上条当麻】は【上条当麻】である。故に【不幸】である。 を見直してほしい。
       【上条当麻】は未だに人間としてまともな分類に入る思考の流れを辿っていないだろうか?
       さて、ここまで読めば、この物語が【歴史】の中でどういう働きをしたかは分かったであろうと思う。 
       これは、成長の物語だ。いや、変化の物語だ。【主人公】が【主人公】たるに至るまでの【変遷】の物語だ。
       人間的成長なんてものはこの世に存在しないのだ。 人は何処まで行っても人である。成長するのは身長か胸か尻のでかさぐらいだ。
       だから、【上条当麻】が【主人公】をする、ということがどういうものの上に成り立っているのか、それを一緒に考えていただければ、幸いである。







  2

 「――――は?」  
 今、この男は何と言った?なんといった?ナントイッタ?
 男は、なんだ、きこえてねぇのか?と呟くと、道の真ん中までわざわざ行くと大きな声でこう叫んだ

 「【上条当麻】ちゃんの両親! 【上条刀夜】と【上条詩菜】は人間として最高のクソ野郎で―す!」

 楽しそうだ。楽しそうだ。楽しそうだ。楽しそうだ。楽しそうだ。楽しそうだ。楽しそうだ。楽しそうだ。タノシソウダ。
 ――――ニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤ。


      コ イツ     ハ    ナ      ニ ヲ      イ ッ        テ イ       ル?
  
      ナ ニ      ヲ ワ       ラ ッ      テ イ     ル?    


 それが、その男性と女性が【上条当麻】にとって、いかにかけがえのないものだと知った上で? こんなことを? なぜ?
 なぜ? なぜ。なぜ。なぜか。それはなぜか?決まっている決まっている、決まっている。決まっている決まっている決まっている決まっている決まっている決まっている決まっている決まっている。
 


   ――――【不 幸     】が 男               を――――――――――――――――――――――ヒョイッ



  あぁ、そういうこと?  避けた。助けた。皆無事だった。あっけなかった。
 へぇーほぉーふぅーん?ふんふん。なるほどなるほど、さっぱりわからんがわかった。【現代の幻想】ってやっぱお前のことだったな。   
 うんうん、よーし次はなお前の両親がガキ産んだらよ、絶対【こうなってる】っておもったからずぅぅぅぅぅうううううーーーーっと考えてた文句が山のようにあるんだよっ!
 聞きたいか?そうかそうか最後まで余すことなく完全無欠に聞きたいってか?分かってる分かってるみなまで言うなお前の心は理解した人間のクズ。いやクズの人間?どっちでも同じか?ヒャハハッ
 さぁさぁよってらっしゃい見てらっしゃ――――【不 幸     】がヒョイッいみてらっしゃ――――【不 幸     】がヒョイヒョイッいこれから始まるの――――【不 幸     】がヒョイッ
 どれだけ面白――――【不 幸     】がヒョイッいのかしらな――――【不 幸     】がヒョイッんて問題ない、さぁさ――――【不 幸     】がヒョイッぁ見てく――――【不 幸     】がヒョイッ
 だ――――【不 幸     】がヒョイッさいここにお――――【不 幸     】がヒョイッわすわ【上――――【不 幸     】がヒョイッ条当――――【不 幸     】がヒョイッ麻】なん――――【不 幸     】がヒョイッと
  こ――――【不 幸     】がヒョイッのガキの両――――【不 幸     】がヒョイッ親は人――――【不 幸     】がヒョイッ間―――― 【不 幸     】がヒョイッとして最――――【不 幸     】がヒョイッ高のク――――【不 幸     】がヒョイッ
 ソ――――【不  幸     】がヒョイッ野――――【不 幸     】がヒョイッ郎――――【不 幸     】がヒョイッなんですよ?それはね―――――【不 幸      】がヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッ ヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッヒョイッ

  ――――さすがにもう無理だな。
 そもそもまともに喋れねェ。うーんこれ以上なくよく分かったわ。行くぞ【上条当麻】。サーカスの時間は終了だ。
 ほらてめぇらもしっしっ、見世物の時間は終わりなんだよこれ以上見ようっつーんなら払うもんもん払ってから・・・なに払うだって?よーし500万から貰おうか一芸でそれだ。
 そして払えなきゃあ、2度と見せてやらねぇ。 ミコトじょうちゃんとやら――――


































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